
Live Beyond 記事シリーズ · 08
コレステロールではなかった。Robert Waldingerが息子と私に語ったこと
50歳の時点で、健康で幸せな80歳を最もよく示していたのは、コレステロールではありませんでした。成人の人生を追った最も長い研究が、ボストンの墓地を歩きながら息子と私に教えてくれたこと。

それは、人間関係でした。50歳の時点で、80歳になっても健康で幸せでいられる人を最もよく示していたのは、コレステロール値でも血圧でもありませんでした。人生をともにする人たちに、どれだけ満足しているか。それが答えだったのです。
Robert Waldingerが息子のアレクと私にそう話してくれたのは、ボストンの寒く晴れた11月のある日、彼自身が選んだ場所でのことでした。そこは、墓地でした。彼はHarvard Study of Adult Development(ハーバード成人発達研究)を率いています。1938年から同じ家族を追い続けている研究です。
アレクは18歳でした。だから散歩が終わる前に、私はRobertに、父親なら誰でも答えを知りたい質問をしました。18歳の自分に話しかけられるとしたら、何と言いますか?
私は彼が誰なのか知りませんでした。ハーバード・メディカルスクールで出会った遺伝学者のAlireza Haghighiに、Robert Waldingerにはもう会ったかと聞かれ、絶対に会うべきだと言われたのです。彼のTEDトークは、これまでで最も多く視聴されたもののひとつだから、と。そこで私は、LinkedInで彼に連絡し、旅の最初の数か月を収めたティーザー映像を送りました。インタビューの依頼はとてもたくさん来るけれど、これには心をひかれた、と返事が来ました。ぜひ会いたい、と。
最初の1分から、家族のように感じられる人でした。そして、あの場所を選んだのには理由がありました。
「墓地で会うのがふさわしいと思ったんです。あなたたちは長寿と、私たちがどう生きるかを研究しているでしょう。墓地にいることがどれほど美しいことになりうるかを思い出させてもらうのは、本当に役に立つんですよ。」
もちろん、私は反論しました。シドニーの、海を見下ろす高台にある墓地の話をしたのです。そこで私は、墓地の下に横たわるより、墓地を歩きまわるほうがずっといいと心に決めたのでした。彼も同意してくれました。そして、思いがけないことを話してくれたのです。
「人が年をとるにつれて幸せになる理由のひとつは、死という現実をより意識するようになることです。死という現実を思い出させられると、実は、気分が落ち込むどころか、私たちはもっと幸せになるんです。人生をもっと大切に思うようになるからです。」
そして、私に向かって。「あなたは年をとるほど、幸せになりますよ」。もう幸せですよ、と私は言いました。「それに、死のこともあまり心配しなくなります」

コレステロールでは予測できなかった
どうやってそれがわかったのか。研究に参加した男性たちが80歳になったとき、チームは、医療記録も含め、彼らが50歳だったころについてわかっていたすべてを振り返りました。そして、30年後に誰が幸せで、健康で、生きているかを予測していたのは何だったのかを調べたのです。
「血圧かコレステロール値だろうと思っていました。でも、違いました。それは、人間関係にどれだけ満足しているか、だったんです。」
「最初は信じられませんでした。だから何度もデータに戻って分析し直しては、『そんなはずはない』と言っていたんです。」
それは本当でした。そして、ほかの研究チームも同じ結果を見つけています。彼らがいちばん驚いたのは、幸せのことではありませんでした。体のことだったのです。
「いちばん驚いたのは、体の健康への影響でした。だって、人間関係が実際に私の生理機能をかたちづくるなんて、どうしてありうるのでしょう? どうしてそんなことが? でも、その仕組みがわかってきているんです。」
その答えの大きな部分は、ストレスです。アレクがストレスに違いないと言うと、Robertもうなずきました。「ストレスと大いに関係しています」。人生が孤独だったり、張りつめていたりすると、体は警戒態勢のままになります。何年もたつうちに、その警戒は慢性炎症(体の中でくすぶり続け、決して消えきらない小さな火)に変わります。そしてそれは、私たちを最も速く老けさせるもののひとつです。よい人間関係は、その警報を鎮めてくれるのです。
私たちの友人で、マインドとハートと体を診る医師のOlivia Lesslarは、同じことのよい面を患者さんたちのなかに見ています。
「食べるものは変えず、つまり相変わらずろくでもないものを食べているのに、食べ方を変えただけで、とても元気になった患者さんたちを見てきました。感謝しながら、食前の祈りを捧げ、時間をかけて、料理の香りをかいで、友だちと一緒に食べる。」
そして、それは両方向に働きます。
「健康な人は幸せであることが多く、幸せな人は健康であることが多いんです。」

この研究は、人とのつながりが大切だと証明しようとしたわけではありません。それを見つけ、信じられず、そしてもう一度見つけたのです。
参加者を家族のように大切にした研究
TEDのおかげで、この研究は「幸福の研究」として有名になりました。いつからそう呼ぶようになったのかと尋ねると、Robertはこう答えました。「私たちはそう呼んだことは一度もありません。TEDの人たちが『幸福研究』と呼んだんです」。アレクは本当の名前を知りたがりました。正式な名前はHarvard Study of Adult Development。Robertの言葉を借りれば、こうです。
「これは幸福の研究ではありません。でも、幸福についても研究しています。」
では、なぜ新しい名前がついたのか。Robertの答えは、ほんのひとことでした。「幸福は売れるからですよ、ね?」
始まりは1938年、724人の若い男性たちでした。ハーバードの学生たちと、ボストンで最も貧しい地域の、最も困難を抱えた家庭の少年たちです。のちに彼らの妻たちが、そして子どもたちが加わりました。ハーバードの学生のひとりは、John F. Kennedyでした。彼は上院議員選挙に出馬したときに研究から離れ、その記録は今、ケネディ図書館に収められています。
こうした研究のほとんどは、10年以内に終わってしまいます。途中でやめる人があまりに多いからです。私たちがRobertに会ったとき、この研究は始まって86年がたっていて、離れた人はわずか22%でした。Robertは「ほとんど前例がない」と言いました。そしてその理由こそ、この物語全体でいちばん美しいところなのです。
「研究の責任者たちは、彼らを本当に大切にしました。まだ若い男性たちでしたから、自分はひとつのコミュニティの一員なんだと感じられるようにしたんです。だから、助けが必要になると、みんな研究のところへやって来ました。医者が必要なときも……。ときには借金、ちょっとしたお金が必要なこともありました。研究は彼らにお金を貸したんです。」
「アンケートを返送してくれたら、お礼のカードを書きました。誕生日カードも送りました。つまり、コミュニティをつくるということなんです。」
じゃあ、あなたたちは彼らにとって家族のようなものだったんですね、と私が言うと、「ええ。ええ」。そして時が来ると、子どもたちのほとんども研究への参加に「はい」と答えました。それが親たちにとって、とても大きな意味を持っていたからです。
考えてみてください。人間関係が私たちを生かしてくれると発見した研究は、人間関係のおかげで86年も続いてきたのです。

同じくらい幸せで、10年短い
それからRobertは、私が今でも考え続けていることを話してくれました。ボストンの最も貧しい地域出身の男性たちは、生涯を通じて、収入がずっと少なかった。それなのに、
「平均すると、彼らはハーバードの学生たちと同じくらい幸せでした。」
「でも、平均して10年早く亡くなっていたんです。」
その一部は、医療の違いでした。でもRobertは、別のことを指摘しました。1970年代から1980年代にかけて、生活習慣が健康にどれほど大切かをアメリカが初めて知ったとき、教育を受けた男性たちはそれについて読み、生活を変えました。ほかの人たちがそのメッセージを受け取ったのはもっと後で、行動に移すことも少なかった。幸せであっても、知らなかったことからは守ってもらえなかったのです。
これこそ、私がいつも伝えている長寿の第一のルールです。防げたはずのことで死なないこと。そして、それは知識だけの話ではありません。まわりにいる人たちの話でもあるのです。
「行動は伝染します。」
「人は、友だちと同じようにふるまいやすいんです。」
友だちがたばこを吸えば、あなたも吸いやすくなる。友だちがたくさん食べれば、あなたもたくさん食べやすくなる。よいほうにも、同じように働きます。Robertはこうまとめました。「教育と、そして私たちがつきあう仲間。その両方が、自分の人生をどうかたちづくるかに大きく関わっているようです」

いちばん大きな教訓を、ふたつの文で
この研究からいちばん学んだことは何かと、アレクが尋ねました。Robertは、ふたつのことを挙げました。
「ある研究参加者がこう言いました。『100年使うつもりで、自分の体を大切にしなさい』」
「そしてもうひとつは、人間関係は、人生の質にとっても健康の質にとっても、私たちが思っていたよりずっと大切だということです。このふたつが、この研究から得られた大きな教訓です。」
人々を未来にわくわくさせることに人生を捧げてきたPeter Diamandisは、2025年12月にロサンゼルスで、私がRobertのことを口にもしないうちに、ほとんど同じことを話してくれました。
「眠りにつくとき、その日いちばん感謝していることを3つ思い浮かべて瞑想するんです。そして決まって、それはまとまった商談でも、会った誰かでもない。子どもたちや家族との何かの経験なんですよね。結局のところ、それこそが私たちにとって本当に意味のあるものなんです。人と人とのつながりです。」
その1分後、私は彼にRobertの研究の話をしました。
旅のいちばん最初の立ち寄り先、2023年8月のダブリンで、Andrea Maierは私たちに、まさにこのことを願ってくれました。
「喜びがないままでも、美しい体を持ち、美しい遺伝子を持ち、エピゲノム年齢がとても、とても低いということはありえます。でも、人との、人々との交流を心から楽しまなければいけないんです。人生には目的が必要ですから。」
(エピゲノム年齢とは、DNAから読み取る、体の内側の年齢のことです。)

長寿にとっていちばん大切なことは何かと聞かれると、私はいつもこう答えます。「マインドとハートと体を、ゴミ箱ではなく神殿として扱おう」。それをRobertに話すと、「すばらしい考えですね」と言ってくれました。
そして、いちばんいいのは、その値段です。
「マインドセットを変えるのに、たくさんのお金は必要ないかもしれないし、たくさんのテクノロジーも必要ないかもしれません。必要なのは、生活習慣を変えることやストレスへの向き合い方、そして人とのつながりを深めることについて、人々がもっと理解できるよう手助けすることかもしれません。どれも高価な解決策ではありません。しかも、お金のかかるハイテクの多くと比べて、とても強力な解決策なんです。」
私たちがカリフォルニアで初めて会ったEric Verdinは、人々がなぜこうしたシンプルな解決策に飛びつかないのかを知っています。2024年9月にワルシャワで話したとき、彼はこう言いました。
「よくこう言われるんです。『ああ、生活習慣の話をするんでしょう。それはもう聞いたよ。そうそう、もっといいものを食べて、もっとよく眠って、ストレスを減らして、友だちを増やす、ってことだよね』。そう、これが生活習慣の要素のすべてです。すると、『それって退屈だよ』と言われる。退屈かもしれません。でも、今の私たちにあるのは、それだけなんです。」
もう少しほかにもあるんですよ、と私は言いました。でも、何が最初に来るかについては、彼の言うとおりです。そして「友だちを増やす」も、彼のリストに入っているのです。

Robertは精神科医です。散歩の途中のどこかで、私はめったに口にしないことを彼に話しました。子どものころ、私はほとんどいつも病気でした。病気のときは、両親は私に暴力をふるわなかった。私が言い終える前に、彼がその続きを口にしました。「つまり、病気のときのほうが……安全だった」。人と人のあいだで起きることが、どうやって体の中に入り込むのか。これは私が知るなかで、いちばんはっきりした例です。それをまた外に出すまでには、長い時間と、本当の助けが必要でした。
Oliviaも、自分の診療で同じパターンを見ています。2024年8月にフォルメンテーラで話したとき、人生のストレスが大きくなるにつれて、どんな人が病気になっていくのかを話してくれました。
「子ども時代のつらい経験であれ、神経系の調節の乱れであれ、何であれ、そういう人たちが病気になっているんです。」
よい知らせは、Robertの研究が何度も見つけているものです。人にされたことは、私たちを病気にすることがある。そして、人から与えられたものは、私たちが癒えるのを助けてくれる。
18歳の自分に、何と言うか
さよならを言う前に、私は彼に例の質問をしました。今の私の息子と同じ18歳の自分に話しかけられるとしたら、何と言いますか? 18歳のころは長寿のことなどまったく考えていなかった、と彼は言いました。そこで私は助け舟を出しました。研究がそう示しているんだから、もっと早く結婚しろと言いますか? ふたりで笑いました。それから、彼は答えました。
「いいえ。こう言うでしょうね。自分を幸せにしてくれるものを見つけなさい。自分が大切に思えるものを見つけなさい。そして、ほかの人がどう思うかは気にしないこと。本当にやりたいことを見つけなさい。そうすればもっと幸せになれるし、そうすれば、もっと健康になれます。」
より幸せに、そして、より健康に。この順番で。
その日の最後の質問をしたのは、アレクでした。これからの旅に、Robertは私たちに何を願ってくれますか?
「そうですね、あなたたちがもう、驚かされるようなこと、思い込みをひっくり返されるようなことに出会っていることを願っています。そして、これからもそうであり続けることを願っています。」
私たちは、出会っていました。私は世界中をまわって、検査や治療やプロトコルを集めてきました。そして、成人の人生を最も長く追い続けてきた研究が教えてくれたのは、長く健康な人生を最も強く予測するのは、その人生をともにする人たちだということでした。今、隣を歩いているひとりも含めて。
そして、同じダブリンでの最初の週に、Brian Kennedyはアレクに、いちばん願っていることを伝えてくれました。
「そうだな、まず何より願うのは、この時間を使って父と息子の関係を築いて、それが本当に強く、一生続くものになることだね。これはそのための、とても大きなチャンスだから。それから、旅をしながらとにかく楽しんで、ついでに長寿のことも少し学んでくれたらいいね。」
私たちは、その3つを全部やりました。

あなたはどうですか? 夜中の3時に、ためらわずにすぐ電話できる人は何人いますか? 本当に、知りたいんです。
答えを、Instagramで送ってください:@longevityadvocate。
映画 旅をした私たちの一年は、来年公開の映画「Live Beyond:父と息子、長寿をめぐる旅」として、いま形になりつつあります。Robertとのこの散歩も、映画のために撮影しました。カメラの1台の後ろには、友人のKamil Rydzewskiがいました。
旅のつづき
これまでの物語
ボストンのAlek Piotrowski、Robert Waldinger、Marek Piotrowski。2024年11月 · Live Beyond
それぞれの引用の出典 Robert Waldinger、ボストン、2024年11月。Olivia Lesslar、シンガポール、2024年2月。Peter Diamandis、ロサンゼルス、2025年12月。Andrea Maier、ダブリン、2023年8月。Eric Verdin、ワルシャワ、2024年9月。Olivia Lesslar、フォルメンテーラ、2024年8月。Brian Kennedy、ダブリン、2023年8月。