シアトル · 2024年6月
ラパマイシンで口の中の老化を巻き戻せる? シアトルのMatt Kaeberlein 、2024年6月。 ラパマイシン研究の顔といえる科学者がいるとしたら、それはMatt Kaeberleinです。私にとって彼は、Brian Kennedy、David Sinclairと並ぶ、この分野の三本柱のひとりです。最初に会ったのはダブリンで、ラパ・ヌイから戻って数週間後、シアトルで再び引き合わせてくれたのはLiz Parrishでした。MattはDog Aging Projectも率いているので、この物語には犬が何度か登場します。
Marek 教えてください。ラパマイシンをどう見ていますか? 私たちの長寿にどんな影響があると思いますか?
Matt Kaeberlein 科学文献からラパマイシンについてわかっているのは、老化という文脈で、研究室で、試されたあらゆる動物モデルで、寿命を延ばし、健康寿命も改善するようだ、ということです。つまり、多くの組織や臓器の働きを良くするのです。
Matt Kaeberlein 治療は中年期から始めることができます。人間でいえば60歳、70歳にあたるマウスにラパマイシンを与えはじめると、そのマウスはより長く生き、より良く機能するのです。
Marek 歯や歯ぐきの長寿のためにラパマイシンを使う研究に関わっているとおっしゃっていましたね。それについて教えてください。
Matt Kaeberlein Jonが博士論文の研究で示したのは、まず、年をとったマウスが歯周病になるということです。それまで、きちんと示されたことはありませんでした。[…] すでに歯周病の兆候が出ている年をとったマウスに、8週間ラパマイシンを与えると、その3つすべてを元に戻せるのです。
Marek ラパマイシンが私たちにもたらすかもしれない利点をこれだけ聞いていると、まるで奇跡の薬のように聞こえます。
Matt Kaeberlein ラパマイシンも、ほかのものと同じですよね? 用量によって反応が変わります。そして、ラパマイシンを飲みすぎると、老化という点では、実はマイナスの影響が出るおそれがあることもわかっています。
Matt Kaeberlein だから、どんなものにも副作用はあるし、ラパマイシンには大きな可能性があると思う一方で、ほかのものと同じようにリスクもある、ということを理解しておくのが大切です。その両方を意識しておく必要があります。
「Jon」とはJonathan Anのことで、Mattの研究室で博士号をとった歯科医で、いまはワシントン大学で教えています。年をとったマウスで元に戻った3つとは、歯のまわりの骨の減少、歯ぐきの炎症、そして口の中の微生物のよくないバランスでした。[2] Jonはいま、同じ考えを歯周病のある人で試しています。MattはDog Aging Projectにも関わっていて、そこでは家庭で暮らす犬でラパマイシンを試しています。犬なら、人間より10倍ほど早く試験の結果が出るからです。[4]
Mattが最後に言ったのは、ラパマイシンが人間でも健康寿命を、そしてもしかすると寿命も助けられるのではないかと、かなり楽観している、ということでした。そして、私たちにリスクの話を最初にしてくれたのも彼でした。